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司法書士倫理と後見業務の心構え

一日一日、日が長くなっているのを感じますね。今日は冬らしい寒風ですが、心は浮き立ちます。

先日、「司法書士倫理と後見業務の心構え」というタイトルで、研修講師を行いました。一年前から、全国の司法書士に、毎年倫理研修を2時間分受講する義務が課せられているので、これまでに受講し損ねていた同業者には有難られていたようです。企画したのはわたしではありませんが。

今回のように、正誤が必ずしも明らかではない倫理や執務指針に関する研修はケースメソッドが適していると言うことなので、いくつかの事例をお示しして受講者に考えていただき、何人かずつ意見を述べてもらうという進行をしました。わたしが想定していなかったグッドアイデアのご意見もあり、受講者の皆さんのおかげで良い内容になったと思います。

ただ、わたしの講評がいささか不十分だったなぁ、という点に思い当たって、そこが残念な思いです。

1つは、「日頃から親しくしている銀行の融資担当者から、ある不動産を担保に取ろうとしているが、土地の所有者が高齢で認知症のようなので、成年後見人が必要なのではないかと相談を受けた」ときに、あなたならどうしますか?というケースについてです。後見人が就いたとしても、融資担当者の思惑とおり担保設定ができるとは限らない、というか、後見人は本人にとって不利益になる法律行為は行わないということを説明しておかなくてはならない、法律事務の専門職としては、法や手続きを知っているだけでなく、その運用にも通じて説明をしないと、依頼者(このケースでは相談という依頼と考えた)の依頼の趣旨に応えられない、というのが主眼の課題だったのですが、一方で、認知症を患っていると思われる高齢者がいることを知ったわけですので、銀行員の情報提供が端緒であったとしても、ご本人の権利擁護のために成年後見制度が必要かどうかを検証する視点があってもよい、という話ができた方が良かったなと思いました。

もう1つは、「成年被後見人が入所している施設の相談員から、別の入所者にも成年後見人が必要なのでお願いしたいと言われた」ときに、あなたはどうしますか?というケースについてです。①同一施設で複数の成年被後見人等を担当してしまうと、成年被後見人同士の紛争が起こったときに利害が対立してしまうこと、②施設から仕事を紹介してもらう関係になってしまうと、本人のための代弁行為が適切に行えない可能性があること、が論点になるという課題でした。ただ、施設相談員から信頼を受けているからこその相談であるし、ご本人たちの状況によっては利害が対立する可能性が非常に少ない場合もあるので、同一施設に二人程度であれば同時に受任しても問題ないのではないかという意見もあり、それはそれで首肯できるものでした。ただ、施設との関係において、施設側からの相談であれば格別、こちらから「どなたか成年後見制度が必要な方がいればご紹介をお願いします」などと、いわゆる売込みをするのは、施設との関係が、言うべきことを言える関係でなくなってしまう可能性を自ら惹起しているわけで、倫理的に許容されないと考える、とコメントしておけばな、とこちらも悔いています。

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