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2014年9月

足を見て分かること

 認知症の成年被後見人と心療内科受診に行きました。市役所に提出する診断書作成のためと、併せて、今後の生活を考える上でのドクターの意見を聞くことが目的でした。

 そこで、ドクターは本人の素足を指さして、「足を見たら、その施設がどんな施設なのかよく分かる。この人は、足の爪はこんなに伸びてるし、水虫やし、外反母趾もひどくて指が重なってる。心ある施設ならこんなの放っておかない」と厳しい口調で仰いました。恐らく、外から見えにくい靴の中だからこそ、真にまっとうな仕事がなされているか判断できる、という意味だろうと思われます。

 かつて研修で、良い施設の見分け方として、お茶を飲むカップに茶渋がひどく付いていないかを確認しては?という話を聞いたことがありましたが、足を見るというのは説得力がありました。

 ところで、この本人は週に6日デイサービスに通っているのですが、果たしてデイサービスで爪を切ってもらうことって、真正面から要求できるのかしら?と気になって調べてみました。入所施設なら当然のことのように思えるのですが、通所なので、何から何まで世話になるのは難しそうな気がしたのです。

 老人福祉法第5条の2第3項に「老人デイサービス事業」について規定されています。そこでは「厚生労働省令で定める便宜を供与する」となっていて、その便宜については老人福祉法施行規則第1条の3で「入浴、排せつ、食事等の介護、(中略)健康状態の確認その他の身体上若しくは精神上の障害があつて日常生活を営むのに支障がある六十五歳以上の者又はその養護者に必要な便宜」とあります。なので、伸び過ぎた足の爪を見過ごしていては「健康状態の確認」ができていないことになるのでしょうし、足の爪切りを自分でできない高齢者なのだから爪を切ることは「必要な便宜」ということでいいのかなという結論に至りました。

 成年後見人は、本人の身上に配慮する義務がありますから、本人の身体状況を把握できていなかったわたしは謗りを免れませんし、施設が適切な処遇をしていなければ、本人に代わって改善を求めるべきですから、そういう意味でも職務を怠っていたことになります。施設任せはダメだということです。

 ドクターの厳しい物言いは、同席していたケアマネジャー同様、わたしにも反省を促すものでした。

後見人の報酬助成

 不動産の決済で、買主が銀行借り入れで購入資金を手当てする場合、所有権移転登記に必要な書類が揃っているのを確認してから、銀行が融資実行手続きをするのですが、これが終わるのに結構時間がかかります。まぁ、一時間は待つのを覚悟しなくてはなりません。これまでの20年の司法書士人生で最長はどれくらいだったかぁ?2時間超えは間違いなくあったと思います。

 先日、売り主の代理人である弁護士二人と共に(他にも不動産業者など幾人か当事者はいましたが)、銀行手続きの完了を一時間ほど待っていました。お二人とも気さくな方で、四方山話をして弁護士業界のことなどお聞きしていました。

 後見人業務が話題になったとき、本人が生活保護受給者で、地元市町村に成年後見制度利用支援事業による報酬助成要綱がない場合など、報酬が貰えずに困っているという話が出たので、わたしはすかさず「公益信託成年後見助成基金」のことをご説明しました。

http://www.legal-support.or.jp/act/foundation_application/bosyuu-youkou.pdf

 この基金は、わたしの所属するリーガルサポートが委託者となっているものですが、利用できるのはリーガルサポート会員に限るものではなく、親族以外の個人が後見人等になっている場合に申込みができます。かつては、弁護士からの申し込みはなかったそうですが、ここ数年徐々に増えてきていると聞いています。

 どうやら、そのような基金があることはご存知だったようですが、リーガルサポートだけのものだと思っておられたそうで、ある意味耳寄り情報だったかも・・・

 この基金は篤志で成り立っていて、寄付がなければ、いつかは資金は無くなってしまいます。そのことも合わせて説明しておけば良かったかな、とちょっと後悔しましたが、実際に基金を利用されれば、きっとそのことにも思いを致してもらえることでしょう。

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