遺言執行者として証券会社と取引
遺言執行の経験はいくつかあって、不動産売却などもしていますが、先日、初めて証券会社との取引を行いました。
遺言者が証券会社に口座を持っていたのですが、かねてより薄々感じていた通り、銀行預金の取扱いとは違っていました。
銀行預金の場合は、遺言執行者としていきなり解約して、現金にしたり執行者名義の口座に振り込んだりできます。一方、証券会社の場合は、一旦同じ証券会社に遺言執行者としての口座を開設せねばならず、そちらへ遺言者の財産を移管するのです。そうしなければ、株式などの売却ができないそうです。
最初聞いたときは、なんで?清算権限を持った執行者として売却させてよ、と思いましたが、不動産も死者名義のままでは売却できないのと同じだと言われて納得いたしました。ちなみに作った口座名は「故○○○遺言執行司法書士梶田美穂」というもの。「司法書士」を入れて職能を明らかにしておく意味は何なのか?遺言執行者に資格は必要ないのだけれど、あまりその点は追及しないことにしました。
遺言執行者口座が開設されたら、同時に財産は移管されるようで、その後の取引は通常と同じこと。すなわち、電話で売却の指示ができるのです。手軽で良いのですが、でも、これが結構違和感があります。手続きが重たすぎるとしょっちゅう文句を言っているものの、普段は書面のやり取りで事務を明確化しているだけに、多額の財産の処分を電話で済ませるなんて、気持ちが落ち着きません。わたしが言ったことと、あなたが聞いたことは一致してる?大丈夫?
おまけに、売却した代金全額を銀行の執行者名義口座に振り込んだ後、残高がゼロになった口座の閉鎖も、口頭でOKだそう。ふうむ、ホントかなぁ・・・
取引明細は事後送付されるので、後から内容は確認できるのですが、それまでは何となくフワフワした思いを抱えることになりました。
これが証券会社の通常の取引方法のようですから、それに従ったわけですが、もしも執行者側の要望としてもっと厳格な手続きによる売却をしたい場合は、その余地はあるのでしょうか?自助努力として、電話を録音しておくくらいしかできないのかな?窓口に行っても、別に書類を書くわけではなさそうだし。相場のある取引は迅速性が最優先されているということですね。勉強になりました。
ところで、遺言執行者の善管注意義務として、どの程度相場に注意を払っておかなければならないのでしょうか。個人的には、原則、成行きでの売却で構わないと思っています。でも、そんなこと、どこにも書かれていません。きちんと理論武装したいものです。
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