被後見人の投票支援???
成年被後見人の選挙権が回復することが決定しました。そして、それを受けて大阪司法書士会では「投票支援の指針」を策定するという記事が毎日新聞に掲載されていました。
その記事には「検討中」としながら、「被後見人の投票意思の有無を事前に確認する」「投票のためにヘルパーや介護タクシーを手配」などと並んで「全政党・候補者の政策などを被後見人に提示する」とありました。
ところで、これまでも被保佐人および被補助人には当然に選挙権はあったわけですが、保佐人、補助人として、私たちは何か支援をするべきだったのでしょうか?わたしは、選挙の前後にご本人とたまたま話すようなことがあれば、「選挙行くんですか?」とか「選挙行ったんですか?」と雑談の一つで尋ねたことはありましたが、それ以上の関与をしたことはありません。
「投票権の行使」について留意しなくてはならない点が、後見の場合と保佐・補助の場合とで異なるのかどうか、深く検討したわけではなく同業者たちと意見交換をしてみたいのですが、もしも後見人として毎日新聞に書いてあったようなことをするべきなのであれば、保佐人、補助人であってもそのようにすべきなのではないかと思います。となると、これまでのわたしは職務怠慢だったということになります。
けれど、候補者に関する情報を提供するなど、何だかやり過ぎだという思いを持ってしまいます。「誰に、どこに、投票するか」の意思を決定するプロセスにまで関与すべきなのでしょうか。判断能力が十分ではない本人が医療行為の方針について決定をする場合には、後見人等として情報を理解できるように支援すべきというのは、とても理解できますが、医療行為は心身に状況に関することであり、後見人の身上配慮義務から導き出されるのだと思います。
でも、選挙は、何を根拠に投票先を選ぶかなんて、完全に本人の自由のはず。名前が気に入ったとか、ポスターが好きな色だった、でも良いはずです。あみだくじで決めたって、他人がどうこう言うことではない。さらに言えば、投票するかしないか自体が、それぞれの自由ですよね。そのような性質の行為について関わるのは、後見人の職務とは思えないのが今の考えです。
もちろん、何らかの障壁があって、投票したいのにできないのであれば、それを可能にするよう手配をすることは後見人の職務とは思います。しかし、わたしは、それは本人の自発的で自由な決定によって「投票したい」という意思が形成された場合に限ると思うのです。
さて、選挙に行こうが行くまいが、選挙権を持つ人の自由なのは大阪司法書士会も同じこと。選挙に行くと約束していても行かないのだって、その人の自由です。でも、そんなことをすれば、人からの信頼を喪うのは世の理。そして、信頼していたのにできなくなってしまうことの寂しさと言ったら・・・ まぁ、ごまめの歯ぎしりなので、止めておきましょう