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2013年5月

被後見人の投票支援???

 成年被後見人の選挙権が回復することが決定しました。そして、それを受けて大阪司法書士会では「投票支援の指針」を策定するという記事が毎日新聞に掲載されていました。

 その記事には「検討中」としながら、「被後見人の投票意思の有無を事前に確認する」「投票のためにヘルパーや介護タクシーを手配」などと並んで「全政党・候補者の政策などを被後見人に提示する」とありました。

 ところで、これまでも被保佐人および被補助人には当然に選挙権はあったわけですが、保佐人、補助人として、私たちは何か支援をするべきだったのでしょうか?わたしは、選挙の前後にご本人とたまたま話すようなことがあれば、「選挙行くんですか?」とか「選挙行ったんですか?」と雑談の一つで尋ねたことはありましたが、それ以上の関与をしたことはありません。

 「投票権の行使」について留意しなくてはならない点が、後見の場合と保佐・補助の場合とで異なるのかどうか、深く検討したわけではなく同業者たちと意見交換をしてみたいのですが、もしも後見人として毎日新聞に書いてあったようなことをするべきなのであれば、保佐人、補助人であってもそのようにすべきなのではないかと思います。となると、これまでのわたしは職務怠慢だったということになります。

 けれど、候補者に関する情報を提供するなど、何だかやり過ぎだという思いを持ってしまいます。「誰に、どこに、投票するか」の意思を決定するプロセスにまで関与すべきなのでしょうか。判断能力が十分ではない本人が医療行為の方針について決定をする場合には、後見人等として情報を理解できるように支援すべきというのは、とても理解できますが、医療行為は心身に状況に関することであり、後見人の身上配慮義務から導き出されるのだと思います。

 でも、選挙は、何を根拠に投票先を選ぶかなんて、完全に本人の自由のはず。名前が気に入ったとか、ポスターが好きな色だった、でも良いはずです。あみだくじで決めたって、他人がどうこう言うことではない。さらに言えば、投票するかしないか自体が、それぞれの自由ですよね。そのような性質の行為について関わるのは、後見人の職務とは思えないのが今の考えです。

 もちろん、何らかの障壁があって、投票したいのにできないのであれば、それを可能にするよう手配をすることは後見人の職務とは思います。しかし、わたしは、それは本人の自発的で自由な決定によって「投票したい」という意思が形成された場合に限ると思うのです。

 さて、選挙に行こうが行くまいが、選挙権を持つ人の自由なのは大阪司法書士会も同じこと。選挙に行くと約束していても行かないのだって、その人の自由です。でも、そんなことをすれば、人からの信頼を喪うのは世の理。そして、信頼していたのにできなくなってしまうことの寂しさと言ったら・・・ まぁ、ごまめの歯ぎしりなので、止めておきましょう

コロナビール的飲み方

 先週、つい興が乗ってしまい、キリンビールの中ビンを、コロナビールのようにグラスを使わず飲んでしまいました 楽しかったからとは言え、お恥ずかしいです・・・

 前回も書いた公職選挙法の改正。どうやら今月中に成立して、夏の参院選に間に合いそうだとか。では、選挙権が回復した成年被後見人の支援者である成年後見人は、どのような対応をするべきなのでしょうか?

 本人が、成年後見制度利用前に投票を行っていたかどうかにも因ると思うのですが、取りあえずわたしは、全員に対して(もちろん本人とは限らず施設も含め)、投票ハガキがちゃんと送付されているかを確認しようかと思っています。リーガルサポート会員の報告によれば、これまで選挙権がないはずの成年被後見人のところへも投票ハガキが送付された例は結構たくさんあるとのこと。それなら反対に、選挙権が回復しているのにハガキが送られてこないこともあり得るかと思ったりして。

 ただまぁ、選挙へ行くように促すのはおかしな話だと思うので、ご本人が投票所に行きたいと思っているのに自力では行けない場合に同行してくれるヘルパーを依頼するとか、そういうことが後見人としての対応になるのかなぁと思っています。

 それにしても、数年前に後見開始申立てをした、それまでずっと選挙に行っていた男性にとっては朗報です。後見人になった親族の方も選挙権喪失のことは残念がっておられたので、きっとホッとされているはず。

 一方で、あまり選挙に関心のない成年被後見人に対して、周囲が介入して不正な投票に繋がらないか、この点については懸念されます。ただ、「疑わしい遺言」と同じで、他者の影響を強く受けているのか、本人が形成した意思なのか、判断するのは困難を極めますよね。

 さて、週末は大阪司法書士会でも投票が行われます。今年から、前日のみ期日前投票も可能になりました。少しでも投票率を上げるため?開票結果いかんでは、再びびんビールをラッパ飲みとなったりして?

やればできるんだ

 成年後見制度の利用をしている「成年被後見人」には選挙権がないとする公職選挙法の改正法案が今国会に提出される見通しとなった、と報道がされています。

 法律改正には何年も掛けるのが日本の流儀かと思っていましたが、3月14日の違憲判決から行動が早いですね。先日も、お母さんと暮らす知的障害の女性から相談を受けました。ずっと選挙には行っているそうで、どの候補者に投票するのかテレビなどを見ながら選んで来たとのことでした。成年後見制度に関わる私たちにとっても、この法改正は朗報です。

 こんなスピードで対処できるのに、もう一つの選挙がらみの違憲判決「一票の格差」問題は解決の目途が立っていないようです。やはり利害関係者自身に改正をしろと言っても無理だという証拠のように思われます。議員も人の子、っていうことですね。国会議員としては、自分の利益より国民の利益を優先させるべき課題であることは明白なのですが。

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