重要判決
成年後見が開始すると公職選挙法第11号1項1号に該当して選挙権がなくなってしまうのは、憲法違反である、とする判決が、3月14日に東京地裁でなされました。国の統治に参加する手段である選挙権は、民主主義の土台となるシステムであって、国民にとってとても基本的な権利です。我が大阪司法書士会の女性事務局員も「とても当たり前の判決と感じた」と感想を述べていました。ぜひ国には速やかに是正を行ってもらいたいものです。
かつて、毎回必ず選挙に行くという知的障がいの方に、後見開始申立て前に、選挙権がはく奪されることを十分に説明ができておらず、冷や汗をかいたことがあります。結局はそのまま後見の申立てとなりましたが、ご本人は納得されているでしょうか?申し訳なく思います。
そして同じ日、大阪地裁堺支部で、親族が後見人に選任されていたところ、本人の預金を横領して、それは監督人である弁護士が適切な監督事務を行わなかったため、として監督人の損害賠償責任を認める判決がありました。自分が使い込んだわけではないけれど、厳しく責任を問われたわけです。
親族が後見人に選任されているケースで、司法書士や弁護士が監督人に選任されている場合は数多くありますが、「監督人をするよりも自分が後見人になった方がラク」という同業者らの意見はよく聞きます。慎重な親族から頻繁に相談が寄せられる、というのも一つの理由としてありますが、一般に、後見人である親族との接し方に神経を使うからなのでしょう。厳しく言い過ぎて疎まれても困るし、かと言って、言わなあかん時は言わなあかん・・・
いい塩梅を見つけることは、何事においても大切ですし、また難しいことのようです
ともかく、このような判例が相次いで出るということは、ある意味、成年後見制度が成熟の段階に入ってきたことを示すのかな?と思っています。