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任意後見人が体調不良で職務遂行できなくなったら

 任意後見の経験が多いと思われていて、有難いことに色々と相談を受けます。

 先日は、発効済みの任意後見人が、体調が悪くこのまま任意後見人を続けられない場合にどのような手続きをすれば良いか、という話を聞きました。どうも、話している人の事案でもないようで、実情は分かりづらかったのですが、ともかく、そんな経験あるわけないし、反対に考えるきっかけを与えてもらって勉強になります。

 恐らくオーソドックスに考えると、任意後見契約を解除することになるのでしょう。任意後見契約法第9条2項です。「本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができる。」と規定されています。体調不良が正当な事由になるかどうかについては、解除を認めなければ本人に不都合が生じる事態も考えられますから、十分に成り立つと思うのですが、家裁がそれを判断するのに、任意後見人の申告だけで許可を出すのか、それとも診断書程度の裏付資料を求めるものなのか、は分かりません。知りたいところです。

 しかし、解除しただけでは、本人の支援者が存在しなくなるだけです。任意後見が発効したということは何らかの支援が必要な状況にあるのでしょうから、そこを手当てする必要があるはずです。

 再度任意後見契約を締結するというのも、技術的にはあり得るでしょうが、判断能力の減退があるわけですから、わたしはこの道は行きたくありません。

 本人の能力如何で、補助あるいは保佐の申立てが可能であれば、本人申立をする道が考えられます。申立権者が近くにいれば、その人に成年後見も含めて適切な類型で申し立ててもらっても良いでしょう。

 しかし、結局は任意後見を終わらせて法定後見で支援することになる、ということであれば、任意後見契約法第10条を適用する方が手っ取り早いように思われます。任意後見人が、本人について後見開始審判の申立てをすると、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」は家裁は後見開始し、発効済みの任意後見契約は終了することになっています。

 もちろん法定後見を申し立てるのは任意後見人である必要はありませんが、実情を調査するには任意後見人の関与は欠かせませんから、任意後見人自身が申し立てるのが適切と考えます。

 果たして、体調不良で任意後見業務遂行が困難となっている事情が、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」になるのか? わたしは解除の時と同様の理由で十分なり得ると思いますが、この辺りどのように運用されているのか知りたいですね。

 もっとベターな方法や経験談などあればご一報いただけると幸いです

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