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成年後見人と事実行為

 成年後見人は事実行為は行わないというのは、どの本にも書いてあることで、市民後見人養成講座でも十分に語られていることでしょう。成年後見人は法律行為を行うのであって、例えば食事を作ったり、入浴を介助したりという事実行為は職務ではないのです。きちんとした食事が取れていなかったり、清潔が保てなかったりする状況があれば、後見人はそういう状況を直接手を下して解消するのではなく、そうした不足を補うサービスを手配することが職務なのです。

 とは言え現場では、もちろんサービスの手配をするにしても、目の前の現実に対応するために事実行為を行わざるを得ない場合があります。ほとんどの後見人が体験していることでしょう。

 その日のわたしにとって、それは、背中掻き

 彼女はわたしに、「温かくなると背中が痒くなる。掻いて。親の敵と思って」と訴えるのです。それを無碍に拒絶することができる人がいればお会いしたい。そんなことできるはずがありません。ひとしきり爪で掻いて、痒み止めの軟膏を塗りました。

 事実行為を繰り返さなくて済むように、どんな手配をしたかって?「まごの手」の購入に決まってますよね!? ちなみに「親の敵と思って」というのは、それくらい強い力を込めて掻いて、という意味のようです。

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