任意後見契約を有効に使える場面
実際の、わたしが受任しているケースがそうなので、任意後見契約は、身寄りがないとか身近に頼れる親族がないような状況の人が、将来判断能力が衰えた時のために準備しておくというのが典型的な利用の場面、とこれまでも研修などで説明してきました。
そのような場合には、当然亡くなった後の様々な手続きも任せられる人がいないので、「死後事務委任契約」と遺言の中で執行者に指定してもらう、ということも併せて準備すると、ご本人にとっては憂いがなくなる、というものです。
昨日今日と、リーガルサポート大阪支部で集中研修があり、わたしは、今日の「任意後見の相談・契約および任意後見人の実務」というコマを受けたのですが、講師によれば、オーナー社長の立場にある人も任意後見契約を締結していると、いざ認知症が発症して社長の役目を果たせなくなっても、任意後見人が代理権目録に基づいて株式議決権を行使すれば、後任者を選任して、会社経営をつつがなく継続できるということで、なるほどなぁ、と思わず膝を打ってしまいました。
もちろん法定後見を申し立てれば、成年後見人は議決権を行使できますが、その場合には、本人がどのような意向を持っていたか議決権行使に的確に反映させることはかなり困難です。
任意後見契約を締結すると同時に、将来は経営権を誰に譲りたいのか、そうした意向を明確に残しておけば、それが任意後見人によって履践されることになるでしょう。
任意後見の分野は、数は着実に増えているとは言え、実務の成熟度は法定後見にずいぶん水を開けられています。このように、人の経験を聞くことは本当に参考になります。