小雨降る土曜日の午後、研修に出向きました。「司法書士報酬と独占禁止法」という題目だったのですが、後半にパネルディスカッションがあるということだったので同業者がどんなこと考えているのか知りたくて、というのも報酬を決めることは頭痛の種の一つですし、顔を出してみたというわけです。
かつては「報酬規定」として強制力があり、その後目安としての「報酬基準」と姿を変えはしたものの、我々の報酬は一定の範囲内に納まることになっていました。しかし今は「報酬基準」も撤廃され、報酬は完全自由化となりました。
昨日の話では、報酬基準があった方が良いという意見が同業者には多いようです。その方が報酬を決めるときに悩まずに済む、とか、依頼者に説明がしやすい、という理由のほかに、自由競争の名の下一部で激しいダンピングが行われていて報酬そのものが値崩れし、業界の衰退につながりかねない、ということもあるようでした。
わたしは値下げ競争に参加しないと決めているし、安いのが一番!という依頼者はその方針で依頼先を探せば良いのだと思っています。昨日の研修でも「不当廉売」というのは私たちのように「仕入れ」がない業種ではなかなか認定されないような説明でしたし、他の同業者の報酬が安いことのみをもって責めることはできないように思います。それよりも、安売りすることは良くない、結局十分な専門サービスを提供できなくなる、と考えるのなら、しんどくっても自分が安売りしないことを貫くことだと思うのです。
パネリストの一人が、「我々自身が仕事に誇りとプライドを持つことが重要」というようなことを発言していて共感を覚えました。武士は食わねど高楊枝、と強がることも大切だと思います。もちろん、背に腹はかえられませんが。
依頼者としては低価格が望ましいことに異論はありません。けれど、適正価格を支払わなければ適正なサービスを受けられないのも、また真実だと思っています。私たちが提供するようなサービスは「経験財」であり「信用財」なのだそうです。購入してみなければその質は分からないし、購入後もその質は分からない、ということだそうで、これを教えてもらったのが昨日の一番の収穫でした。同じ職能でも仕事の品質に差はあるのですから、他所の同業者と価格が違っても堂々としておけば良いのです。
パネルディスカッションの結論がそんな感じだったら良かったのにな、と感想を持ちました。