成年後見監督人の届け出
最近、メガバンクから、成年後見監督人として印鑑証明書と実印の押印を求められました。親族である成年後見人が、取引支店へ後見人としての届け出に行った際のことです。
まず、民法第849条の2で、家庭裁判所は必要があると認めるときは成年後見監督人を選任できる、とあり、親族後見人が選任された場合などに、我々専門職が監督人に選ばれるケースがあります。
民法第864条では、後見人が民法第13条第1項の行為を行う場合には、後見監督人が選任されているときは監督人の同意を得なければならない、と定められています。但し、元本の領収についてはこの限りでない、となっています。
さて、監督人の実印押印と印鑑証明書を求めた銀行の言い分は、要約すると、元本の領収(預金の引き出し)以外の、総合口座貸越や投資信託取引があり得るので、それについては監督人の同意が必要だ、だから同意した旨の届け出を求めている、ということです。
ということは、その届け出書に署名押印してしまうと、監督人として将来の取引について包括的に同意したことになって、後見人はフリーハンドで貸越や投信購入ができることになってしまいます。そんなことでは家裁が監督人を選任した意味がなくなるし、こちらとしても職責を果たすことができません。
と言うわけで、「監督人として包括的同意を与えるなどできないことはご理解いただけると思います。現に他の金融機関ではこのようなことは求められていないし必要とは考えにくい。」と言ったところ、本部への照会の上、監督人の届け出不要との回答がありました。
銀行としては、自己の取引が無効にならないようにとの純粋な防衛策だったのでしょうが、もう少し、制度の趣旨とか顧客の利便性とかも考慮して、利用者に過重な負担を強いないシステム設計してもらいたいものです。