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父の思い出

 先日、父の一周忌を済ませました。
 この一年、突然の涙に襲われることもままありましたが、その間隔も長くなり、近頃では落ち着いて父のことを思い出せるようになった気がします。

 小学校に上がった頃、父から何度も言って聞かされたことが三つあります。
1、本を読め。本ならなんぼでも買ったる。
2、女の子やからなんて関係ない。勉強したかったら大学院まで行かしたる。
3、英語がペラペラに喋れるようになったら、なんぼでも外国に行かしたる。

 1は確かに駅前のホロホロ堂書店でよく本を買ってもらいましたので、宣言は実行されていたと思います。
 2は、大学3回生の冬から、母を通じて「大学院に行かへんの?」と何度も聞かれ、終いに痺れを切らした父から「大学院を受けたらどうか」と言われましたが、早く社会に出たいから、と拒みました。
 3については、英語がペラペラに喋れるようにならなかったので、履行してくれたかどうか定かではありませんが、小4から英会話を習わせ、大学時代も頼みもしないのにホームステイに行かせてくれたことを思えば、ペラペラに喋れるようになることを期待してくれていたのでしょう。

 こんな風に書くと、もの凄い教育親父という感じですが、父自身が、最も得意としていた勉学を父親(わたしにとっての祖父)を高校時代に亡くしたために断念せざるを得なかったので、その無念を子に託していたのでした。

 一般的な父娘に比べると、格段に確執の多い関係だったと思います。それも全て、小学校卒業時に担任のアイデアでが親が書いた「二十歳になった息子・娘へ」という手紙に父が書いたとおり、「お前は俺に似すぎてい」たからに他ならず、双方大人になって角が取れてきてからは、似すぎているが故に理解しやすい仲になり、彼と話すのはそれなりに楽しかったものです。

 もう父の意見を聞くことができないのは残念でなりませんが、贅沢を言えばキリがなく、大人になるまできちんと育ててもらったことをただただ有り難く思い、月並みですが「親孝行、したい時には親はなし」を実感しています。

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