成年後見の理解が一番進んでいる金融機関は?
成年後見人の職務はよく「財産管理と身上監護」と説明されるように、後見人になると金融機関とのやりとりが重要な仕事となります。
今日は、被保佐人Mさんの定額貯金を解約して普通貯金口座に入金する手続きのために郵便局へ出向きました。ちなみに銀行なら「預金」ですが、ゆうちょは「貯金」みたいですね。
就任時に保佐人の届け出は済ませており、今日は窓口に来たのが本当の保佐人かどうかの確認として、わたしの住民基本台帳カードを提示しました。そこで、窓口の職員とバックの職員の「ん?保佐人なら本人が来ないと・・・」という会話が聞こえたので、「いや、金融機関との取引の代理権あるんで大丈夫です」と登記事項証明書を見せながら言うと、「あっ、代理権あるんですね」と納得されたのです。すごい!判ってるじゃん!
保佐開始の申立てをシンプルに行うと、保佐人には民法13条1項の9つの行為について同意権が与えられます。本人がそれらの行為を行う場合には保佐人の同意を得なければならず、もしも保佐人の同意なしでその行為を行えば、本人や保佐人はその行為を後から取り消すことができるのです。
すなわち、同意権と取消権は表裏の関係です。
同意権のみが付与されている場合、法律行為の主役はあくまでも本人。保佐人はそのお目付け役にとどまります。しかし、本人の状態によっては、保佐人が法律行為を行う方が望ましい行為もあります。そんな場合には、保佐人に別途代理権を付与する申立てを行うのです。
Mさんについても施設入所契約や金融機関との取引については、ご本人では心許ないため保佐人に代理権が付与されているのです。そして、郵便局の職員はそこのところの違いを理解していたというわけです。
違いのわかる金融機関、ってところでしょうか。
後見人等が就任した時に、金融機関へその旨を届け出しますが、この時点でもゆうちょ銀行は違いがわかっています。金融機関側からは、①成年後見登記事項証明書(権限を証明するもの)、②後見人等の本人確認書類(登記事項証明書に記載のある人物であることを確認するもの)の提示と同時に、後見人等の印鑑証明書を求められることが多いのですが、これは後見人等の立場からすれば過剰な要請です。口座開設の時でさえ本人確認ができれば差し支えなく、実印で何かを担保しようとしたりはしません。後見人は家裁から選任された法定代理人であり、その届け出には、後見人が付いたことと、窓口に来た人物がその後見人であることが確認できればいいはずです。
ゆうちょ銀行ではある時点でマニュアルが改訂されたのか、後見人等に実印・印鑑証明書を求めなくなりました。
他の金融機関では未だ強固に印鑑証明書の提示を求めるし、任意後見監督人の届け出を求めたりするところもあって、「勉強して!」「研修します?」と言いたくなることがありますから、ゆうちょ、ますます見直しました。
« 1Q84 | トップページ | 喜ばれることの喜び »