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成年後見申立セットの親族同意書

 4月から、大阪家裁(堺支部、岸和田支部を含む)で配布している成年後見申立セットの内容が若干変わりました。

 まず、本人の財産目録中、未分割の相続財産については別紙が用意されました。従来の書式では、確かに少し書きにくかったですから。こうした対処が行われたということは、遺産分割を目的とした成年後見申立が多いということなのでしょう。

 次に、成年後見人候補者が欠格事由に該当しないことの陳述書の追加。欠格事由は民法847条に規定されていますが、同条5項の「行方の知れない者」に該当しないと陳述するというのは、何だかシュールですよねー。

 そして、もっとも大きな変更点とみなされているのが、「ご用意いただく書類」に親族からの同意書が加えられた点です。この同意書の意義については、先日の大阪市成年後見支援センターの会議でも結構喧々諤々になりました。

 家裁もなかなか巧みな表現をしているので、よくよく見れば「単なるお願い」であると分かっても、パッと見には同意書を用意しなくてはならないのだ、という印象を与えているようです。

 セット中の同意書見本には「申立人大阪甲男申立てによる本人大阪花子についての後見等開始事件につき、本人大阪花子に後見等が開始され、後見人等に大阪甲男が就任することに同意します。」と記載されています。よって、この同意書が求められるのは候補者を特定した場合です。候補者を挙げず、家裁の選任に任せる場合には必要ありません。その点は今日も大阪家裁に確認しました。

 そもそも、親族(申立権者?推定相続人?)の同意は、成年後見開始の要件ではないのですから、同意書を提出しないからといって却下事由にはなりません。成年に事理弁識能力の衰えの実態があれば、家裁は審判しなくてはならないのです。

 これは、本人以外が申し立てた際に、申立人が手配した候補者(申立人自身を含む)について、他の親族が異を唱える場合があり、そのようなケースでは家裁は公正を期すために全く別の第三者を選任する対応をしているので他の親族に対して意見照会をしていますが、そのプロセスを省略したいという要請に基づくものと考えられます。

 成年後見申立ての手引きP.21中段には「いろいろ事情もおありかと思いますので、同封の同意書は、反対をしている方については提出していただく必要はありませんが、意思表示ができて、賛成されている方々からは、お受け取り下さい。」とあります。反対者をあぶりだして、家裁はどのように対処する予定なのか、この点は不明です。全員賛成の場合だけ候補者を挙げて来て欲しいとのメッセージなのでしょうか。

 手引きの同ページ下段には、同意書をもらって欲しい親族の範囲が記載されています。一見、推定相続人の範囲かとも思いますが、兄弟姉妹が先死している場合のその子(代襲相続人)は含まれていません。これも家裁に尋ねたら、「甥姪は結構です」とのことでした。中途半端です。そういう点からも、この同意書が法的根拠に基づいて求められているのではないことは明白です。 

 結局のところ、申立人が挙げる候補者について反対者がいる場合には、現実にはその候補者は選任されない可能性が高いのですから、候補者を挙げずに申し立てることになるのでしょう。後見人の人選のために審判に時間を要するという不利益はありますが、親族間で紛争がある以上時間はかかってしまいます。急を要する場合には、審判前の保全処分を併用すべきでしょう。

 いずれにせよ、親族の同意書取得を負担に捉えず、できる範囲で提出すれば良いと考えます。

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