« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月

審判前の保全処分

 同業者のメーリングリストに最近倒産情報が配信されて来ます、続々と。ちょっと投げやりな気分になってしまいますね。

 昨晩は、大阪家裁の書記官お二人が講師で「審判前の保全処分」の研修がありました。大阪司法書士会の研修案内には「保全処分の実務」と書いてあったので、民事保全と勘違いして受講したテリー同業者のような方もいらっしゃったようですが、ともかく会場は満員でした。(そもそも2000人超の会員を抱える団体としては、会館は手狭です。研修を受けろ受けろと言うけれど、全員が参加したら会館に入りきりません。新築当時はここまで会員が増加するとは夢にも思わなかった、と大先輩がぼやいていました。)

 2年ほど前、80歳代の一人暮らしの女性の後見開始申し立てをしたところ、以前から通帳をしまい込んで何度か再発行してもらっていたようなのですが、審判を待つ間にもまた通帳が見当たらなくなってしまい、家裁に相談すると「保全処分を申し立ててもらってもよいが、時間がかかります。本案の審判が早く出るようにします」という内容の回答をもらいました。

 けれど昨日の講義によれば、診断書で「本案認容の蓋然性」が、通帳などで管理すべき財産があるすなわち「保全処分の必要性」が認められれば、数日で「財産管理者の選任」はなされるとのことでした。ただ、財産管理者の候補者を上げていないと、その人選に時間がかかる場合があるということでした。大阪家裁では、財産管理者は第三者に限る、親族は選ばない取扱いをしているそうです。

 講義後の受講者からの質問は審理期間のことに集中していましたので、現場の問題意識が家裁に届いて審理が早くなったということかな?と感じました。

 「後見等命令」は「財産の保全のために特に必要があること」が要件になっており、具体的には悪徳商法の被害を受けたことがあるとか、親族による搾取の恐れが認められる場合などに認容されているということでした。後見等命令の審判がなされると、財産管理者は本人のした行為を取り消すことができますから、後見開始の審判を待つ間も少しは安心です。

お小遣いの削減・・・

 早いもので2月も最終週。ここ数年、花粉が飛びだす頃になぜか尋常でない眠気に誘われる日が続いて、今年も往生しています。漢方的に言うと、胃が弱っていると異常な眠気が襲うそうです。そのメカニズムはよく知らないのですが、季節の変わり目には元々弱いところにストレスが掛かるので、私の場合は胃が良く働かないらしい。ちなみに異常な食欲も胃の不調が原因の場合があるらしいです。

 最近相談を受けた成年後見事件の話です。ご本人は障害者施設で暮らしておられます。障害年金が収入なのですが、毎月の収支が1万円程度赤字です。いくばくかの貯えもありますが、まだお若いのでできれば温存したいところ。となると、ご本人のお小遣いを減らすしかなさそうです。お小遣いの使い道は、カラオケボックスや映画などの外出です。ご本人はとても楽しみにしておられるようなので、後見人としては回数を減らすようにお話しするのは忍びない事でしょう。

 貯えを使い切ってから考えるというパターンもあるでしょう。この辺りの対応は、後見人によって差が出る部分かな?という気がします。わたしなら?完全に赤字をなくすことができないまでも、もう少しお金のかからない余暇の過ごし方がないか、ご本人や施設を交えて模索するでしょうか・・・でも、ご本人が今まで通りを強く希望されたら、それに従うことでしょう。自己決定の尊重を貫けばそうなりますし、いくら我慢を続けても貯えが底を突く日はいずれ来るのでしょうから。

時代遅れ

 香川の病院で受精卵の取り違えをした件で、生命に関することなのだからもっと慎重に緊張感を持って扱うべき、などのコメントが聞かれました。今さら時計を巻き戻せないことは百も承知ですが、そもそもいのちを物のように扱うから、こんな事故も起きるのでは。受精というのは子宮内で起こる出来事のはず。受精卵はシャーレに入れて発育の悪いものは捨てるんだそうです。そんなことを始めた時から、ミスや悪用は覚悟しなくてはならないのではないのでしょうか。だからわたしは受け容れられないのです。

 でも、こんなわたしは時代遅れなのでしょう。

後見開始申立ての本人調査について

 大阪家裁へ成年後見の申立てに行ってきました。申立人であるお母さんから申立書作成の依頼を受けており、作成者として申立てに同行したものです。司法書士法第3条1項4号に司法書士の業務として「裁判所に提出書類の作成」が挙げられています。あくまでも書類作成ですから、申立ての代理人になることはできません。しかし、家裁が申立人から事情を聴く際に同席することは事実上認められているようです。

 1年前は、大阪家裁の後見係は大変込み合っていて、申立の予約は1か月程度待たなくてはなりませんでしたが、今は予約の電話をすると翌週には予約を入れることができるようです。申立件数が減ったような気もしないので、家裁側の態勢が充実したのかも知れません。

 ご本人は、身体的には障害はないのですが、気分の動揺が大きく、特に知見のないところに行くのはストレスが掛かるようで、今日の申立には出頭しませんでした。家事審判規則第25条に「家裁は後見開始の審判をするには本人の陳述を聴かなければならない」とあるので、本来は本人調査は行われるべきでしょう。以前は、本人の出頭が困難であれば家裁調査官の出張が行われていましたが、事件数の増加でそこまでできていないようです。今回の申立については医師による鑑定は実施されるのですが、鑑定も省略、本人調査も割愛というのは問題ではないかな、と個人的に考えています。最近の認知症高齢者についての後見申立は、どうもそれが実情のようなのです。鑑定を実施すれば鑑定費用、これが5~10万円かかるので、鑑定省略を歓迎する向きもありますが、それであればせめて家裁による本人調査は行うべきではないでしょうか?もちろん、いわゆる植物状態など、一切の意思表示ができない方の場合は格別ですが。

 最近、胃腸の弱い日本人向けという漢方薬を飲んでいるのですが、その効果かやたらとお腹が空いて困っています。晩御飯食べにさぁ帰ろ。

他山の石とする

 正確には「他山の石、以て玉を攻むべし」というんですね。テリー同業者がしばしば「他山の石とさせていただきます」って、他人のふり見て我がふり直せ、的に使っています。

 数日前のローマでの前財務相の姿をニュースで見て、まっ先に思い浮かべたのは実はこの言葉でした。あんな状態になったらすぐに寝る!寝られない時はあんなんになっちゃダメ!自分に言い聞かせました。薬の飲み過ぎは経験ないですが、お酒の飲み過ぎは時々ありますので。

 記者会見現場よりも腹立たしかったのは、帰国後の国会での答弁。「ゴックンはしていません」と、まるで気のきいたこと言ったかのような満足げな笑みに、まさにただただ呆れるばかりでした。政治家は官僚の悪口ばかり言ってるけれど、これじゃぁなめられても仕方ないでしょう。十羽一絡げはいけませんが。

 一方、村上春樹のイスラエルでの講演のニュースには涙を流しました。素面でしたが。村上さんの声は初めて聞いたような気がするし、演説内容が、声高でなく魂をのぞかせる彼の小説のスタイルそのもののように感じられて、胸を打たれました。

 今、宮部みゆきの「日暮らし」を読んでいて、この人の構成と文章の巧さ、洞察力の確かさに感嘆しているのですけれど、ジャンルが異なるから当然と言えば当然ですが、そこに宮部みゆきの魂を感じることはありません。己の能力を自由自在に操って意気揚々とした姿が目に浮かぶだけです。でも、村上春樹の小説からは、作家の苦しみ、消耗が伝播してくるのです。その沈殿があったから、英語の演説でも揺さぶられたのでしょうねぇ。果たして、村上春樹はその思考が凄いの?それとも表現力が卓越してる?やはり両方かー。ともかく良かった、スピーチと動く姿。結局ミーハー?

著者校正という作業

 秋にほうほうの体で納品した原稿の著者校正をしています。「2月6日までに、ご返送くださいますよう」と依頼書には書いてあるのに、まだわたしの手元でのたうっています。どうしてなんでしょ?

 リーガルサポート本部の監修で再考を求められた部分も結構あったのですが、見解を異にする箇所は気持ちよく削ってしまうことにし、必ず明日は投函!と決意しています。締め切りを破るだなんて大御所ぶってる・・・親友テリー同業者は、こういうだらしなさが大っ嫌いだそうです

 「遺言と遺言執行の実務」をたった30頁で書くというのは、正直無理があると思いましたよん。だからってたくさん書きたかったわけじゃなく。前もっての言い訳です。

過払い金減らずとの報道

 昨日の日経に「消費者金融への過払い請求は予想に反して減っていない」という記事が載っていましたね。

 債権者から取引履歴を開示してもらうのにも一苦労だった5,6年前。債務整理のご相談に来られた方が長期の取り引きで過払い金が発生していることが判明して、頑張って取り返したこともありました。常に平行して十数名の依頼者を抱えていたものです。なのに今は全然。だから新聞報道は意外でした、わたしもpuっちゃんも。

 テレビや看板で積極的な広告展開をしている事務所に集中しているということなのでしょう。ネット掲示板などを覗くと、全てを信頼するわけにはいかないですが、対応が遅いとか全社からの返還が終わらなければ取り戻した過払い金を渡してくれない、などの不平が書き込まれていてました。そりゃぁ、いくらスタッフを抱えていても、あれだけの広告に見合う依頼者を引き受けていれば遅くもなると想像します。

 当事務所にもたまにホームページを見て、「過払い請求の報酬はいくらですか?安い事務所に依頼したいと思っています」という問い合わせメールが来たりしますが、事件を誘致するために低額報酬を提示するのも嫌なので、「当事務所は高くはありませんが、安くもありません」と答えたこともあります。過払い金ブームからは完全に取り残されているようです。

 でも、昨秋から任意整理を受託していた方。残債務はあるのですが、途中で過払いになっていたので、1月に出る予定だった時効の起算点についての最高裁判決を待っておいて、先日こちらに有利な和解をしました。ちゃんと最新情報はキャッチアップしています 草分けとは言えないけれど、ブーム以前から取り組んでいた司法書士としての矜持です。

お客様アンケート

 被後見人の簡易保険で「生存給付金」が貰えそうなことを発見したので、かんぽ生命のフリーダイアルに電話してみました。最近はやりの音声ガイダンスで始まり、担当者に繋がれる直前に、「サービス向上のためお客様アンケートを行っております。ご協力いただける方は『1』を・・・」と言われたので、面白そうだと思い1を押しました。

 電話口に出た担当者から、成年後見人から生存給付金を申請する際の必要書類など一通り聞いた後、「お客様はアンケートにお答えいただけることになっておりますが、このままお繋ぎしてよろしいでしょうか?」と聞かれ、再び音声ガイダンスでのアンケートが始まりました。途中から「本日の担当者についてお尋ねします。親切にご説明いたしましたでしょうか?説明は分かりやすかったでしょうか?」などと尋ねられて、それぞれに1~5のボタンを押して五段階評価で答えます。

 担当者はアンケート内容を知っているんでしょうから、アンケートに協力するとした問い合わせと、協力しないとした問い合わせには、もしかしたら対応に差が出てしまうかもしれませんね。以前の郵便局とは、客を客とも思わない対応に度々バトルを繰り広げたものですが、「アンケートに協力する」としておけば間違いはないかも・・・などと感じた次第です。

不況の足音

 以前債務整理を受任していた女性から電話がありました。東大阪の町工場で働いておられるのですが、先週・今週と自宅待機になっているとのことです。お給料は手渡しなので、先週は一度それを受け取るためだけに会社に行ったそうですが、会社が暇なのにお給料を貰うのも気を遣う、と仰っていました。転職先を探そうにも、そんなところが見つかるとも思えない、との言葉に思わず相槌を打ちました。次の出社は、会社から連絡があってから、だそうです。

 債務整理の間に知ったことなのですが、この町工場は従業員に手厚い経営をされていて、退職金規程も十分な内容のものが備えられていました。恐らく、簡単に従業員の生活を脅かすようなことはなさらないのだろうと思われます。

 一方、大企業は所有と経営が分離しているので、従業員の生活を守るために経営者が共に耐え忍ぶ、ということにはなりにくい仕組み。取締役報酬を減額することくらいはできるでしょうけれど。巨額の内部留保は許せん!という主張をテレビで見ましたが、それにはあまり共感はできません。会社の所有者たる株主が、内部留保よりも雇用確保を優先するという意思表示をしてくれなければ、経営者はそのような判断はできないのじゃないでしょうか。けれど、小さな町工場は経営者と従業員が皆で分け合っていることを思うと、釈然としない思いは残ります。つまるところ、政治でドラスティックなことをしてくれないと!

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »