任意後見受任者のしごと
「どうしてこんなに優しくしてくれるの・・・」任意後見契約を締結していて、今は見守り中のZさんが細い声でおっしゃいます。おそらくは気持に由来する体調不良で入院中のZさんを、主治医の診察に同席するために訪ねた時に、お気に入りの洋菓子屋さんでちょっとおやつを買って行ったのです。食欲が出ないと嘆いておられるので、好きなものなら食べる気も起るかと思って。
その問いに正直に答えるとすると「それがわたしの仕事だから」ということになります。身も蓋もない言い方ですが。わたしのような第三者と報酬を支払って任意後見契約を締結される方は、大抵の場合、身近に頼れる人物がいません。老いを実感するにつれ孤独と不安が増幅するのも無理からぬことと思います。そして、そのような精神状況に可能な範囲で配慮・気遣いをするのは、任意後見受任者として当然のことと考えているのです。
Zさんは賢く慎み深い方なので、ご自身が常に弁えを持っていたいと考えておられます。だからあまり周囲に頼り過ぎてはいけないと自制しておられ、恐らくはその結果なお孤独を感じていて、冒頭の少しおおげさな発言になってしまうのでしょう。
但し、わたしはただの任意後見受任者で、不安を拭い去るほどにいつもいつもZさんの傍にいることはできません。何ができてどこからはできないのか、明確な線引きはないし、受任者の属人性によるところが大きいような気がします。だから当然に、ご本人にその線引きを認識してもらうなんて至難の技で・・・これが任意後見のジレンマで、難しい点だと感じています。