居住用不動産の処分
特別養護老人ホームに入所して、もう5年以上経っているBさん。以前に住んでおられた賃貸住宅をずっと借りたままにしていて、毎月末家賃を振り込んでいます。後見人に就任した当初、明け渡しを検討したのですが、近くに住むご親族が、また元気になって戻ってくる可能性がゼロとは言えないし、荷物の移動も大変だし、ということで、借りたままにしておくことを希望されたので、家賃が毎月の収支に収まる範囲だったこともあり、賃貸借契約を継続していました。先日、そのご親族にインフルエンザの予防接種のことで連絡をしたところ、「家の方の処分をそろそろしてもらってもいいと思っている」とのお話が出てきました。
民法859条の3で、「後見人が被後見人に代わって、居住用不動産の売買、賃貸、賃貸借の解除などをするには、家庭裁判所の許可を得なければならない」となっています。Bさんのように施設に長期に入所していても、その前に自宅としていたところは原則「居住用不動産」ですので、この契約解除にも家裁の許可が必要になります。許可が下りるのは間違いないですから、家主とも連絡を取りながら、家財道具の処分業者も手配し、当然親族の方々に事前に廃棄してはならないものを選り分けてもらって、と一仕事になってきます。
居住用不動産の売却となればもっと大変で、売却価格が適正かどうかが重要ポイントになります。以前に、被後見人の家を買いたいという不動産業者が来られて交渉したことがあるのですが、後見人が自由に売却できると勘違いしておられ、売ってくれたらそれなりのお礼をする、と言われたのでとっても憤慨したことがあります。なめんなよー、という感じです。結局価格が折り合わず物別れに終わりましたが、この時は家裁に「居住用不動産を売却しても良いか?本人は自宅に戻ることはほとんど考えられず、また貯えがだんだん減少しているので」と事前に照会をかけました。